2011年01月05日
6 月夜のミニスカ
ミニスカばあちゃんの必殺兵器『ミニスカ蹴り』は、日頃の努力のたまものです。
スポーツジムに通う時間もお金もないので、練習はいつも深夜の松山公園です。
お相手するのは、だいたいいつも高一の妹、花梨(かりん)です。
蹴りをいれる相手は100%男性ですので、背が自分より高くなくてはいけないので、170センチと姉妹の中では一番背の高い妹が選ばれました。
妹は、高校生の分際で、髪は金髪、黒口紅に牛骨のイヤリングと、典型的なメタリックヤンキー。
夜遊びと、バイトでいつもクタクタに疲れているはずなのに、ばあちゃんに誘われると、いそいそと公園についていきます。くせものの妹が、どうしてこんなに素直になるか不思議になってきいてみました。
「ねえ、カリン。どうして、あんな夜の夜中、ばあちゃんにつきあうの?」
「おばあちゃん一人で、かわいそうだからさ」
「本当は?」
「約束したんだ」
「どんな約束?」
「練習中に死んだら、牛革のブーツもらうって」
「なるほど、そういうわけか」
「あのブーツ、すっげえカッコイイ。でも、すぐ行っちゃうんじゃないかと思っていたら、とんでもない。元気、元気」
「行っちゃうのを待ってるみたいだね」
「ブーツがほしいだけよ。中身はお姉ちゃんにあげるわ」
「いらんって」
一度、深夜の公園に練習の様子を見に行ったことがありますが、かなりユニークな光景でした。
どんなものかと言いますと……。
「ばあちゃん、行くよー」
と、芝生にしゃがみこんだ妹が、ストローに石けん水をつけ、息を吹きかけて大きなシャボン玉を作ります。
ふくらんだシャボン玉は、絶妙のバランスで空気中に静止します。しょっちゅう付き合っているだけあって、妹もなかなかの腕前です。すると、
「アギジャビヨー!」
と、シャボン玉をめがけて、足全体をやわらかくしならせながら、鋭い蹴りを放つおばあちゃん。
と言っても、シャボン玉を壊すのではなく、足首が当たる直前で寸止めし、同時に足首を回してこねるような動きをします。
すると、シャボン玉は壊れることなく、やわらかい風圧で体をゆがませながら、ふわふわと夜空に舞い上がるのです。これが、実は、必殺ミニスカ蹴りの極意なのです(いつか詳しく説明します)。
「次、乱れ蹴り」
妹は厳しい声で言いながら、一息でストローから小さなシャボン玉をいくつも作ります。
ばあちゃんは、空気中に乱舞するそのシャボン玉を、横蹴り、前蹴り、回し蹴りと自在に繰り出して割っていくのです。まるでダンスでもするような優雅さです。
月夜に舞うミニスカ姿のおばあちゃん。
そして、月の光を映してキラキラ光りながら闇に漂うシャボン玉。
この世のものとも思われぬ美しさです。
おばあちゃんの顔さえ見なければ、の話ですが……。
スポーツジムに通う時間もお金もないので、練習はいつも深夜の松山公園です。
お相手するのは、だいたいいつも高一の妹、花梨(かりん)です。
蹴りをいれる相手は100%男性ですので、背が自分より高くなくてはいけないので、170センチと姉妹の中では一番背の高い妹が選ばれました。
妹は、高校生の分際で、髪は金髪、黒口紅に牛骨のイヤリングと、典型的なメタリックヤンキー。
夜遊びと、バイトでいつもクタクタに疲れているはずなのに、ばあちゃんに誘われると、いそいそと公園についていきます。くせものの妹が、どうしてこんなに素直になるか不思議になってきいてみました。
「ねえ、カリン。どうして、あんな夜の夜中、ばあちゃんにつきあうの?」
「おばあちゃん一人で、かわいそうだからさ」
「本当は?」
「約束したんだ」
「どんな約束?」
「練習中に死んだら、牛革のブーツもらうって」
「なるほど、そういうわけか」
「あのブーツ、すっげえカッコイイ。でも、すぐ行っちゃうんじゃないかと思っていたら、とんでもない。元気、元気」
「行っちゃうのを待ってるみたいだね」
「ブーツがほしいだけよ。中身はお姉ちゃんにあげるわ」
「いらんって」
一度、深夜の公園に練習の様子を見に行ったことがありますが、かなりユニークな光景でした。
どんなものかと言いますと……。
「ばあちゃん、行くよー」
と、芝生にしゃがみこんだ妹が、ストローに石けん水をつけ、息を吹きかけて大きなシャボン玉を作ります。
ふくらんだシャボン玉は、絶妙のバランスで空気中に静止します。しょっちゅう付き合っているだけあって、妹もなかなかの腕前です。すると、
「アギジャビヨー!」
と、シャボン玉をめがけて、足全体をやわらかくしならせながら、鋭い蹴りを放つおばあちゃん。
と言っても、シャボン玉を壊すのではなく、足首が当たる直前で寸止めし、同時に足首を回してこねるような動きをします。
すると、シャボン玉は壊れることなく、やわらかい風圧で体をゆがませながら、ふわふわと夜空に舞い上がるのです。これが、実は、必殺ミニスカ蹴りの極意なのです(いつか詳しく説明します)。
「次、乱れ蹴り」
妹は厳しい声で言いながら、一息でストローから小さなシャボン玉をいくつも作ります。
ばあちゃんは、空気中に乱舞するそのシャボン玉を、横蹴り、前蹴り、回し蹴りと自在に繰り出して割っていくのです。まるでダンスでもするような優雅さです。
月夜に舞うミニスカ姿のおばあちゃん。
そして、月の光を映してキラキラ光りながら闇に漂うシャボン玉。
この世のものとも思われぬ美しさです。
おばあちゃんの顔さえ見なければ、の話ですが……。